『おおっとここで選手交代だ! 背番号9! ツバサ・オオゾラ!』
アナウンサーの声に耳を疑った。
まさか。
息を呑み、呼ばれた選手の登場を待つ。
画面に現れたのは、確かに僕の見知った人。
誰よりもサッカーを愛し、誰よりも明るい笑顔でサッカーをしていたはずの彼。
その瞳に生気はなく、無表情で前を見据えていた。
『神の子・サンターナの相方として活躍中の彼は、サッカー小僧、サッカーの申し子など、母国・日本ではそう呼ばれ、親しまれていましたが…』
『リオでのあだ名は、サッカー・サイボーグ! その冷徹な瞳と正確無比なプレイ、そして相手のプレイを完璧にコピーするその姿は、まさにサイボーグそのもの!』
僕は耳を疑った。
だって、彼は誰よりも人間味あふれるサッカーをしていたはずなのに。
今中継されている映像に映る翼くんは、本当に冷徹なサイボーグそのものだった。
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「さぁ、いこう! ツバサ」
「お前と俺…。二機のサッカー・サイボーグに負けはない!」
無表情のまま前を見据えるサッカー・サイボーグに対して俺は微笑む。
コピー・サイボーグのお前と、デストロイ・サイボーグの俺。
もはや敵無し、どんなチームだって勝てやしない。
神は少しだけ慈悲をくれた。
孤独なサイボーグに同じような仲間をくれた事。
俺はボールを軽く蹴り、ツバサへと渡す。
さぁ、楽しいショーの始まりだ!