またな!

『さようなら』は永遠の別れを意味するのか、と調べようと思った。
もうすぐやってくる別れに合わせて、ちゃんと意味のある言葉を使おうを自分にしては特殊な考えを持ったからだ。

こっちに来たときに賀茂のおっさんから貰った、全然使っていない綺麗なままの国語辞典を開いて、分厚いページを大雑把にめくっていく。
さようなら、さようなら…さ行…と、少し真面目に文字を探してみれば、やっとその項目にたどり着く。
『別れのときに使う言葉』…正しいけれど味気のない、つまらない解説。

『永遠』を意味する『さようなら』があるなら、俺はそれをアイツラに使わなきゃいけない気がする。
でも、俺自身そうしたいのかといえば違うし、そうしたいとも思うし。

じゃあ、もっともらしい言葉はあるんだろうか。日本語はたくさんあるんだからきっとあるだろう。
ページをバラバラとまた大雑把にめくってみた。いろんな言葉の波が俺の視界から現れては消えていく。
でも、自分的に合う言葉は見つけられなかった。
こんなにいっぱい言葉があるのに、永遠を別れを教える言葉なんてないんだから、不思議だ。
…じゃあ、アイツラに告げる別れの言葉は、やっぱりさようならなのか。

この青いユニフォームを脱いで、さようならなんてなんて締まりが無い。
もっと発破をかけるような、カッコいい言葉、ねぇかな。
いろんな言葉を調べても、もっともらしい言葉がやっぱり見つからない。
辞典を開き直し、またページを捲る。あ行、さ行、た行…。
やっぱりなんもねぇな。そう思ってため息をついて、ま行あたりで手を止めた。

…じゃあ、こうしよう。どうせ、永遠の別れを投げつけられないなら。
俺は別れの言葉で、もう一ついい言葉を知っている。これは結構前に覚えた言葉だ。
色んな意味をこめて、アイツラへ投げかけようじゃねえか。
乱暴に広げていた辞典を閉じて、また荷物の奥深くにねじ込んだ。
コレを再び使う時はもうないと思うから。…いや、もしかしたら使うかも。
分厚い本を場所を奥深くからちょっとだけ手前に移動させて、俺は荷物の蓋を閉じた。

「またな!」

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