早田が小野田を思い出すまでの話 - 13/15

学校で改めて辻に小野田の話をしてみた。
辻はキョトンとした様子で首を傾げ、最後に一言

「なんの話だよ?夢?そんな話、俺たちしたか…?」

そう、俺の夢の話、即ち小野田が絡む奇妙な話はスッポリと周りから消えていたのだ。
中西も勿論覚えていなかった。翼は……連絡先を知らないのでわからないが、少なくとも相談していた二人の記憶からは消えていた。
小野田の絡む夢は本当に俺だけに残る形で終わってしまったのだ。

「お前の事が、本当に分からねぇよ……小野田。」

小野田。小野寺の代わりにフォワードとして試合に入ったアイツ。
なんの因果かアイツとは良くつるみ、悪いことも良い事もした。
しかしそれは前世の記憶の物だ。
この世界に小野田は居ない。なぜか分からないが。
それが翼の言ってた”イレギュラー”だったのかは分からない。
どちらにせよ、思い出したところでもう、アイツには会えないのだ。

サッカー部の練習後、一人帰り道を歩く。
不意に横切った茶色の長髪の男。
俺は惹かれるように視線で追いかけ、そして。

「お前、小野田か!?」

その男が振り向いた時、俺の表情がまた一段と大きく歪んだのを見て、その男が小さく笑ったのを、俺は見逃さなかった。

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