早田が小野田を思い出すまでの話 - 5/15

聞きたいことの対価が重すぎる。
話し合いに、と呼び出された某ファーストフード店。
早田はお小遣いの3割を削り、中西にバーガーセットを奢らされるハメになった。
眼の前に置かれたバーガーセットを目の前にして中西は嬉しそうにそれを頬張る。
…これで何も知らないと言ったら、絶交覚悟で腹にパンチをお見舞いする予定…だった。
だが、意外な返事が中西から出たのだ。

「小野田やろ。知っとるで。ワイも夢でよう会うからな。」

説明が不要どころの騒ぎではなかった。
半泣きでやけくそ気味に話そうと思った矢先の事だったからだ。
涙が一気に引っ込み、驚きから口をあんぐり開けていた早田に対して中西は
その大きく開けられている口にさり気なくポテトを二本突っ込んだ。

「なんや、お前は”憶えて”ないんか。」
「…いや、ワイやから”憶え”とったんかなァ。」
「お前らが南葛に負けた日、夢に小野田が出てきたんや。」
「試合はどうやった?って聞くから、お前誰や?って聞いたら、ふざけとんのかって怒りよる。」
「ああ、いや、ワイも最初は忘れとったんよ。だって、”こっち”には小野田、居らんやろ。」
「ま、待て待て!待ってくれ!話が読めねぇよ!なんだよ!”こっち”って!」

さも当たり前のように会話を続けようとする中西を止めて自分の質問を投げつける早田。
“こっち”ってなんだ?まるで違うところに居るみたいな言い方! まさか他県民か!?和歌山あたりの住人か!?
突然の展開についていけず脳内で激しくツッコミを入れながらも押し込まれたポテトをかじりながら
話の展開が理解できないためとにかく順に話すように中西に促す。

「うーん、何処から話せばエエやろか。これ、話しすぎると危ないって止められとるからな。」
「…まぁ、エエやろ。知らんやつが夢に出てくるより認識してるやつが出てくるほうがしんどさは少ないかもしれん。」
「何より、小野田が喜ぶやろうしなぁ。」
「いやだから、分かんねぇって!!なんの話だよ!!」
「まぁ、まぁ。詳しい話は別のやつに頼むとしてやな、ワイが話せる限りのこと話したる。」
「だから、追加でハンバーガー3つ追加してええやろ?」
「ば、バカヤロー!!予算オーバーだよ!!!」

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