中西が語るには、こうだ。
自分たちはかつて違う『時代』を生きていたという。そして、その『時代』にはイレギュラーな存在がいた。
それが『小野田』という男だそうだ。
何故、今の時代を生きていないはずの『小野田』がこの『時代』の俺達に呼びかけてきたは分からない。
そして中西が言うには『時代』という概念も内容も『小野田』と『もう一人』の存在から教えてもらったものでしかなく
自分は記憶をある程度思い出せたが、『時代』に対する確かな感覚などは思い出せないという。
「…その『もう一人』って誰なんだよ。」
「こればっかりは話されへん。キツーく口止めされとんねや。」
「ちなみにソイツからはかなりエエもん貰ったさかい、ワイは口割らんど。」
「俺からバーガー3つ、バーガーセット2セット、おまけにデザートにアイスまで奢らせておいて、だんまりかよ!」
「…ンー、友情の維持のためにもヒントぐらいはあげてもエエか。」
「ソイツの事は俺ら全員知っとる。でも、関西の人間じゃあらへん。」
「夢にも出てきおる。…これで十分やろ?」
中西はずる賢いところがある。ほとんど答えともとれるそのヒントは俺の頭でもしっかり理解ができた。
それと同時に、別の意味の疑問を抱いたのもまた理解できた。
何故、『ソイツ』が『その事』を強く口止めするのか。
それがどうしても、理解できなかったのだ。