『ダメだよ、早田くん。』
『これ以上はいけないんだ。』
『君が―――。』
声に雑音が混ざる。 眼の前にいる奴の姿が大きく歪む。
いつもならいるはずの『小野田』の変わりに居た『ソイツ』
首を小さく横に振って、それ以上の詮索を拒む。
「なんでだ?小野田ってなんなんだ?何故思い出しちゃうけないんだよ!」
「これ以上俺の夢に出てきてほしくないんだ!眠れなくなっちまうだろ!」
「これ以上ワイの夢をかき回すのは止めろや!もう、あの夢を繰り返したくないんや!」
自分の嘆きの声に驚きを隠せず、困惑した表情で目の前に居た『ソイツ』を見つめる早田。
普段から関西弁など使わないはずの自分が吐き出した言葉が、中西と同じ大阪訛りの関西弁だったからだ。
困惑は混乱を呼び、目を見開いたまま、再び口を開き、漏らした言葉、それは。
「…あ、れ…なんで、ワイ、関西弁…を…?」
さらに歪むソイツの姿。
ソイツが大きく腕を伸ばし、早田を捕まえようとする。
『ダメだ、早田くん。』
『君が、取り込まれてしまう。』
『早く、目を―――!』
ソイツの手を取ろうとした瞬間、目の前に見えたのは。
『逃 さ へ ん 』