「小野田くん」
「…なんや、お前かいな。俺は早田にだけ用事があるんや、はよ帰れ。」
「そんな冷たいこと言わないで。…早田くんは多分もう来ないんじゃないかな。」
「は?なんでやねん。俺が無理やり引きずりこんでるんや、”来ない”なんてありえへん」
「俺が引きずり込む限り、アイツは嫌でもこの夢を見るんや。逃げられへん。」
「彼にだって少なからず、思うことがあると思うよ。」
「望まなければ夢は見れない。俺はそう思う。」
「そんな訳あるか。嫌でもここに来る。そんで、今度こそ」
「今度こそ”思い出す”って言うのかい?」
「…………。」
「小野田くん、君はどうしたいんだ?思い出したって君が”この時代”に現れることはないんだよ。」
「それに、早田くんを揺さぶったってどうしようもないんだ。何も変わらない。なのに、何故そこまで?」
「”存在”ってのは認識されて、初めて”そこに居る”と証明されるんや。」
「分かるか?その”時代”を生きてなくても、けして登場を許されなかったとしても」
「誰かの記憶には”存在”することが出来るんや。」
「俺がボールを蹴った記憶も、俺がアイツとサッカーした記憶も、俺がアイツと全国優勝を誓った記憶も」
「早田が思いだぜば、”なかったこと”にはならんやろ。」
「俺は別に今の”時代”を生きたい訳ちゃう。 アイツに”忘れんで”ほしいだけなんや。」
「危害を加えるつもりも、アイツの人生を歪めるつもりもあらへん。」
「なのに、それすら許さへんのか。 なあ、なんでなんや。」
「翼、俺は”なんのために生きている?”」