「…良くやるよ、シンゴ。嬉しいな。キミはまだ潰れない。」
「潰れないまま…強くなって、また這い上がってくるんだろうな。」
「フ、フフ、…ハハハ…!……明日はもっと酷くするようにマッテオ達を煽っておかないとな。」
「シンゴ、君の笑顔はとても可愛いけど…泣いてる顔はもっと可愛いよ。」
「君が…更に強くなる事を祈るよ。そして、また俺にその泣き顔を見せてくれよ。」
「Ti amo(愛しているよ)、シンゴ。」
ここ最近の酷いあたりは、俺がわざと煽っているから。
シンゴ、君が眩しすぎるからさ。誰よりも眩しい笑顔で俺を誘惑するから。
俺は君のすべてが欲しくなったんだ。笑顔だけじゃなく…その涙さえも。
マッテオ達は単純なんだ。俺がかばう素振りを見せればわざとらしく俺の目の前でシンゴを攻撃し始める。
彼が試合で上手くアピール出来るように細工してれば、彼らは躍起になってシンゴを追い詰めようとする。
その度に見せるシンゴの悲しみに歪む顔が堪らなく可愛らしくて、俺は全身を悦びに震わせてしまうんだ。
明日はどうなるんだろうな。それを考えるだけで言い得ぬ悦びが全身を駆け巡っていく。
こんな事はいけない。分かってはいるんだ。
こんな事したは彼が傷つく。苦しんで悲しんで歪んでいくシンゴの気持ちを考えればこんな愛情のぶつけたって何にもならない事を分かっている。
けれど、それでも止められないんだ。 君が俺に何でも見せてくれるから。
だから、その涙すらも欲しくなってしまった。
シンゴのロッカーの前、すっかり汚れてしまった扉をゆっくりとなぞる。
明日はこの扉が更に汚れるんだろう。どんな下品な言葉で、どんな汚いもので装飾されるのだろう。
それを見たとき、君の顔はきっときれいに歪むんだろう…。
荷物をまとめ、ロッカールームを出る。
明日起こる惨劇が楽しくて進む足取りは軽い。
またあした、シンゴ。 そう呟いた俺の顔はどんな顔をしていたんだろう。