逃げ道 - 2/2

「お疲れさん。新田。」

そしてーー。
WY戦、数々の戦いの後優勝と言う栄光を掴み取った日本代表は各々の場所へと帰っていった。
そして新田も帰ってきた。この南葛へ。
あの日の約束のとおり、新田は俺の家へ顔を出した。

「まずは、おめでとう。」

「ありがとうございます。」

「頑張ったな、新田。」

「何言ってるんですか。一番頑張ったのは翼さんや岬さん、それに…」

「バーカ、俺はお前を褒めたいんだよ。」

新田を抱き寄せて頭を撫でる。
いつもは自信満々なくせに、本当は誰よりも真面目で
誰よりも強いお前を俺は知っている。
大友中で出会ったあの時から。
そして、そんなお前をどうも好きだったのも、やっぱり当たり前なんだろうか。
撫で回している最中、新田から何度も抗議の声が上がる。
最終的には無理やり逃げられて、恐る恐る腕を伸ばしそっと抱き締めてきた。

「浦辺さん、好きです。…ずっと、好きだった。」
「アンタを憎んでも、憎みきれなかった。アンタの目がこんなにも優しくて。」
「アンタが好きで、好きだからこそ。…アンタとWYで暴れたかったんです。」

「…あん時、俺が行かないといったこと、まだ恨んでるか?」

「いいえ。もう全て恨んじゃいない。悔しいけど、アンタらしいと思えた。家業のためにサッカー辞めたのも、悪役になるためRJ7として出てきたのも。」

「そうか。」

「答えを聞かせてください。憎むほど愛してしまったアンタから、同じ答えが聞きたいんです。」

抱きしめる腕は震えている。
同じ答えだと分かっていても恐ろしいのは、きっと俺も同じだ。
コイツは本当に…真面目で、繊細で。
大丈夫だと教え込むように、俺も新田を強く抱きしめ返す。

「好きだぜ、新田。ずっと言えなくてごめんな。」

新田はただ一言、ありがとうございます、と少し鼻声混じりに礼を零した。

 

 

 

憎みきれず、アンタを見つめるだけの日々だった。
手を伸ばす事も、近寄ることもできないまま
ずっと見つめ、慕い、憎む、情けない程に自分勝手な日々だった。

それでも、視線の先にいるアンタは
俺を見つけると笑ってくれたから。

俺はアンタを諦められずにいたんだ。

憎しみの逃げ道を求めて彷徨っていたはずの俺の心は今
その憎しみを捨て去り、やっとアンタの元に辿り着けた気がした。

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