ウルグアイvs日本の時、弓倉が観客席に座っていたのは知っていた。
視界にチラチラと映るその姿はあの頃と何も変わらない。
俺を見つめる目は誰よりも優しかったし、俺があんな態度を取ったところでアイツはポンと忘れるようなタマでもない。
それでもアイツに投げつけた啖呵を取り消しする勇気は俺にはなかった。
けして目線を合わせることは無く、俺は試合を続けたのだった。
「リョーマはさ、もっと素直になればいいのに」
「どういう意味だよ」
「強がるのはやめろ! ……って話!」
「俺は強がってねぇよ」
「イヤイヤ! 流石に俺でも分かるから! めちゃくちゃ強がってるって!」
ビクトリーノの相変わらず茶化してくるが、最後には『悔いは残すなよ』とアドバイスにもならない言葉を残してこの部屋を去った。
強がってねぇよ。強がってるのは弓倉の方だよ。
もし、ここで素直に『俺も好きでした』なんて言えば、苦しむのはアイツなんだ。
もしかしたら、この『好き』すらも俺の勘違いで、アイツにとって俺は弟とか後輩とかそんな類の友愛だったなら俺が悲惨だ。
何度夢見たって、何度苦しんだって、俺は自分の言葉を変えるつもりはなかった。
悔い?悔いなんて、幾らでもある。
あの日手を払った時に、全部捨てちまったんだから。