地獄 - 9/9

「これで本当に、さよならだ」

空港のロビーで呟いた言葉。
もうここに来ることも、アイツラに……弓倉に会うことは無い。
空を見上げて、誰かを想うことも無い。

「好きだったぜ、弓倉。誰よりもお前が好きだった」

全部ここに置いていく。
お前が好きだったって感情も。
だから、お前もどうか。

飛行機へ乗るため歩みを進める。
一瞬、声が聞こえた。誰かが俺を呼ぶ声。
その声を聞いて、振り返った先に誰も居なかった。

「……未練タラタラかよ、俺」

その声が、弓倉の声に聞こえた気がして自嘲した。
再び前を向いて、歩き始める。

さようなら、と誰にでもなく呟いた。

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