火弓リョ短編まとめ - 2/7

糸は解けた

「もし、この先に道があるなら……お前と走れたかなぁ」

蒼い空を飛んでいく飛行機を見上げながら呟く。
少しの間だけ俺を魅了した金髪の馬鹿は、夢を叶えに帰っていった。
俺の夢とお前の夢が繋がることはない。
どう絡んだって絶対違う方向を向く。
繋がることはないし、絡み合う事もない。

でもそれでいいとも思う。
もし、同じように走り続ける道があったら、それはお前が望まない結果になっちまうから。

「結構、好きだったよ。お前のこと」

嘘。大分好きだった。
お前になら最高のパスを送れると信じた。
その夢は、もう終わったけどさ。

「……お前のこと、好きだった」

嘘。今でも好きだ。
お前の笑顔も、我儘も、身勝手さも、強さも、全部。
……その夢は、もう終わらなきゃならない。

伸びる飛行機雲がゆっくりと消えていく。
俺の心も同じように消えてほしい。
鮮やかな蒼から目を背ける事のできないまま。
俺は一人、泣いた。

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