汗の味/しかえし
「暑くねぇのかよ」
「暑いけど、焼けるのがヤなんだよ」
ジャージの首元を大胆にはだけさせて弓倉は呟く。
サッカー選手に日焼けなんて当たり前だろうに、弓倉はそれを好まない。
青白い腕をジャージで隠しているくせに、赤く染まる頬をタオルで拭うぐらいで隠しもしない。
「焼けるのはしょうがねぇだろうが」
「焼けると水膨れになるし、痛いからな。日焼け止め塗りたくるのは顔だけで十分だよ」
そう言って、やっとジャージを脱ぎ始めた。
中のシャツが汗でしっとりと濡れ、首や肩にも汗の粒が見える。
ふう、と小さくため息をついて汗を乱暴に拭おうとしている弓倉の腕を掴む。
そのまま無意識に首へと顔を寄せ、汗を舌で舐め取った。
「っっ………!?!?」
しょっぱい、と愚痴をこぼすと同時に、弓倉に思い切り突き飛ばされる。
なんとか尻もちをつくぐらいで助かったけど、顔をあげた先にはさっきより顔を真っ赤にしてる弓倉が居た。
「おま、お前!!!覚えてろよ!!!」
「てか、突き飛ばすこたぁねぇだろ!」
「蹴らなかっただけありがたく思え!!この変態!!」
ブルブル震えながら弓倉は叫んで部屋を出ていく。
置いてけぼりを食らった俺は、呆然とその背中を見送った。
「……てか、覚えてろよ、ってなんだよ?」
いや確かに俺すげー変なことしたけどさ。
そのキリカエシは……違うくねぇか?
「………リョーマのバカヤロー……」
柱の陰で、顔を真っ赤にしたまましゃがみ込む弓倉を、その後坂木が見つけて保護した。
俺は岡野に思いきり蹴られた。
汗の味なんて知らなくてもいいのに。
肌を滑り落ちていくその宝石を舌で追いかけて、絡め取る。
ちゅ、と甘い吸い付く音がやけに耳について、いやらしい。
「お前が昼やったことだろ」
弓倉が笑いながら呟く。
いやぁ、さぁ。悪かった。悪かったけど!
でも、こんなときにやらなくてもいいじゃねぇか!!
深い愛撫の中で、漏れ出るソレとはまた別のもの。
肌に滲む汗を舌ですくい取り、それを飲みこむ。
見えにくい場所に残される痕は、もしかしたらそういう気持ちのあらわれなのか。
舌先が上へと滑り、腹筋を超えて胸元にたどり着く。
そのまま乳首をなぞられて吸い付かれると、めちゃくちゃ変な感じがする。
ゾクゾクとして、気持ちいいけど、くすぐったい。
首に滲む汗も忘れず吸い付いて、最後には唇に到達した。
「もっと、お前の味を教えてくれよ」
あ、目がすわってる。
俺はそれに答えるように唇に吸い付いた。
…………お前にだけ教えてやるよ!