火弓リョ短編まとめ - 4/7

夜の囁き

寄せては返す波のようにも思える。
穏やかな夜のはずなのに、触れ合う熱がたまらなく恐ろしい。
珍しく弓倉の方から寝床に入ってきて、何を言うのでもなく狭いベッドの中軽く密着して眠りだした。
ナーバスになるようなタイプでもないくせに、と思っていたが実際コイツは繊細な方なのかもしれない。
漏れる吐息の穏やかさは、安堵の証なのだろう。
俺の方は穏やかではいられねぇ。
サラリとした黒髪が、僅かな動きでもパサパサと揺れる。
黙ってりゃ、本当にキレイなのにな。

月明かりが窓からこぼれ、柔らかな色を床に落とす。
そんな中で俺はお前の肩に触れて抱き寄せるだけでも酷くもどかしい。
届きもしない愛の言葉を一つ囁いて、俺もお前と同じ夢を見れるようにと、馬鹿らしい祈りを胸に目を閉じる。
明日の朝、お前はどんな顔をして目を開けるんだろう。
そしてどんな顔をして、俺におはようと言うのか。
楽しみにしながら眠りについた。

少し大きな寝息が聞こえた頃に、黒髪の隙間から柔らかな視線がこぼれた。

「そういうことは、起きてる時に言えよ……」

まるで反響するかのように、甘い囁きが今度は眠ったばかりの龍にかけられた。
月明かりがまだ鮮やかな深夜の話…………。

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