布団の上で ※R18ぽい描写あり
少し肌寒さが感じられるようになった今日このごろ。
柔らかな布団の中で愛し合った記憶が、ふと蘇った。
その時は熱い夏の夜の話で、額の汗のせいで前髪がひっついていたのを間近で見ていた。
黒髪が乱れて、少し濡れて絡みつくさま。
自分とは違った髪色で、さらさらとしている柔らかなお前の髪。
いつもは無表情で前を見据えているお前が、今はただ俺を見下ろして腰を揺する。
垂れる汗も、漏れる吐息も、溢れる思いも、ねじ込まれる快楽すらも。
今はただ俺だけを思い、俺だけのために捧げられている。
その光景がたまらなく気持ちよくて、愛しかった。
この光景が逆転することもあるけれど、俺はこうして見上げてお前にどうこうされるのが好きだったりする。
その熱が冷めるその時まで、俺はコイツを独り占めするんだ、と。
わざとらしく脚を絡めて、唇を奪って、甘い声でお前を煽る。
その時だけ時が止まっていて、俺もお前も、ただただ獣に成り下がる。
それでいい、それがいい。
その熱に浮かされて、高まり堕ちるのが、いい。
そんな事も、もう随分前の話のように思える。
今のこの布団には俺しかいない。
あの時抱かれた布団ほど柔らかくもないベッドの上はどこか寂しい。
なめらかな素材に頬ずりしたところで、あの熱は戻ってこない。
…………ため息をつく。
「いやぁ、遠征だもんなぁ。しゃーない」
弓倉は試合の遠征という展開。
もちろん俺も自分の試合があるので自宅ではないベッドに寝てるわけで。
不意に思い出したら、なんかムラムラしてきたし。
ええと、今何時だ?……流石にこの時間に電話は怒られるな。
次のオフ、一日ひっついてようかな。
まずは様子見のメッセージでも送っておくか。
手に取ったスマートフォンの画面を指で軽く叩いた。