鏡の中の俺たち - 1/6

朝起きた時、隣で寝ていたリョーマの髪が黒かった。
何事かと思い、頭を掴んでまじまじと見てみれば、『やめろよ』とクールに払われた。
何時もなら『じゃれるな!』と怒りそうなのに、かなりドン引きした様子で見てきたからムカついた。
リョーマ、と名前を呼ぶと不思議そうに首を傾げて、『お前いつもは火野呼びなのに』と言葉を返してくる。
よく聞くと、俺の知ってるリョーマの声じゃない。
赤と白のユニフォームを着た黒髪のリョーマがそこに居た。

他のメンバーも少しずつ違う。
でも一番違うのは、やっぱりリョーマだ。
落ち着いた声色で俺の名前を呼ぶ姿は別人に近い。
プレイを見ればちゃんとリョーマなのに、全部が全部違う。
違和感バリバリで火野、と呼べばどこか嬉しそうに『なんだ』と返してくる。

なぁ、リョーマ。……いいや、火野。
お前には俺と同じ顔して、火野って呼んでくれる誰かが居るんだな。
そんでさ、ソイツのこと好きなのか?
なんて聞いてみようと思ったけど、止めておいた。
だって俺はお前の知ってる弓倉じゃないよ、なんて普通信じないだろ?
だから、言わないままちょっとだけ様子を見ることにした。

朝起きた時、隣に寝てた金髪が火野だった。
いつ染めたんだよお前。しかも俺に相談もなしに。
しかも半裸で寝てるし。てか隣で寝ていいとか言ってねぇし!
火野ーーーー!!!!と大声で叩き起こせば、ビックリした様子で俺を見つめる。
『うるせぇよ、弓倉!』と拗ねた様子を見せる火野にすごい違和感。
あとなんか声違わないか?誰だよお前。
俺が思い切り睨んだら、ベッドから降りて苦笑いしている。
訳わかんねぇ。お前は本当に火野か?と聞いてみれば、『リョーマって呼べよ!タニンギョーギするほど怒ってんのか?』と笑った。
いや、俺はお前の名前呼んだこと無ぇし!!

ユニフォームの色は青と白。
知ってるけど知らないメンバーに、やたら馴れ馴れしい火野。
俺はとにかく違和感まみれのこの世界が気持ち悪かった。
てか、火野がとにかく距離が近い。
やめろ!と怒れば、なんで?と聞いてくる。
俺が知ってる火野はやめろ!って言ったら分かったって言うぞ!
プレイはそのまんま火野なのに、なんでコイツはこんなに絡んでくるんだろう。

……火野、いいやこの場合リョーマ?まさか、お前。
俺とおんなじ顔した奴の事、気に入ってんの?
俺が、火野を気に入ってるようにさ。
金髪の火野を睨んでたら、そのまま顔を近づけてきて、額にチューしてきやがった。
ムカつきすぎて思い切りスネを蹴った。
馬鹿野郎!俺はお前が好きな俺じゃねぇよ!

黒髪のリョーマはクールで、感情が読めなくて、でもやっぱりリョーマだった。
金髪の火野はバカでガキっぽいのに、プレイの時は獣のようで、やっぱり火野だった。

じゃあさ、お前が知ってる『俺』はお前にはどう見えてんだろうか。
違和感がないぐらい同じ、なのか?
じゃあ聞くしかない。

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