ゲーム機のむこう

ぼくがパパにもらったもの。
サッカーボール、サッカー用のシューズ、きれいな色のユニフォーム、サッカー関連の本。
誕生日が来るたびに贈られるものは、ぼくの未来を期待してのもの。

嬉しいはずなのに、寂しくて。
悲しくないのに、涙が出た。

試合に負けたあの日、あの日本人が記者つてに渡してきたゲーム機。
汚れているのにちゃんと動く、電池持ちも良くて、操作に慣れればそれなりに楽しいモノ。
サッカーばっかりだったぼくが、こんなモノを手にするなんて夢にも思わなかった。
もちろんパパにこんなモノは貰ったこともないし、なんならゲームなんて宜しくないと遠ざけられていたモノ。
ぼくは今、それで息抜きをするのが趣味になりつつあった。

ぼくが負けてから、パパはなんだか少し魂が抜けちゃったみたいで、昔ほど鳴らないケイタイに落ち込んでるようだけど。
ぼくは新たな世界が一つ開いて悪くない気がしている。
ディアブロは、飽きねぇのか?と聞いてくるけど、意外と飽きないものだ。
同じ内容の繰り返しにはなるけど、サッカーも同じようなものだから。
画面越しにチカチカ光るキャラクターとピコピコと耳に響くサウンドは、刺激的にも見える。

ねぇ、パパ。ぼくが見ていた世界って狭かったのかな。
パパに愛されたくて始めたけど、ちゃんと大好きだったんだ。サッカーが。
でも、僕が見ていた世界は狭かったのかな。
もっと強くなるために、色んなことをもっと見つめなきゃいけないのかなーーー。

 

「そういえば、お前新しいゲームソフト欲しい、って言ってたよな。見に行こうぜ」
「ぼく、売り場もラインナップも知らないんだけど」
「適当に店回って、適当に買えや。そのほうがきっと楽しいさ」
「宝探しみたいだね」
「そうだな、お前に必要なのはサッカー以外でも無茶する事かもな」
「……そうかな」
「あのモシモシオヤジなんか気にしてたら、息が詰まっちまうだろ?サッカーと一緒で、お前も自由にやれよ」

ディアブロは豪快に笑いながらぼくの手を引く。
このゲーム機みたいに、ぼくもまだまだ無限の可能性を引き出せるのだろうか。
ねぇ、パパ。ぼくは強くなるよ。パパの為じゃない、自分のために。
その時はパパにプレゼントを強請りたいんだ。
サッカーじゃなくて、ぼく自身を愛してるって証を見せてほしいんだ。

パパ、いつか一緒に。

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