「暑ッッー……」
うちわを扇いでアイスにかじりつきながら、ぽつりとつぶやく。
この部室は何も施設が揃ってないからとにかく暑い。
練習もそこそこに、涼を求めて部屋に入ったものの窓から入り込む日差しのせいでよけいに蒸し暑い。
そんな中で、気だるげに座っているボクを慰め程度にうちわで扇ぐ八木も、暑さからか苛ついた様子で表情を強張らせていた
「オラァ!もっと気合入れてあおげよ!」
「俺も暑いんスけど……」
「頑張ったらあとで俺があおいであげるから!ほらキビキビあおぐ!」
「はぁ」
やる気のない生ぬるい風にいらつきながらも、右足で軽く八木をせっついて更に煽る。
その様子にどうやらムッとしたのか、あおぐ手を止めてそのままボクの前につったって、そのまま両手で顔を押さえ込むとそのままキスしてきた。
いきなりの事に面食らい、動けなかったせいかそれを素直に受け入れてしまったけれど、慌てて足を蹴って払い除けた。
「痛いんスけど」
「八木ィ!お、おまえ!誰の許可を得て勝手に……!」
「はぁ、スイマセン」
「絶ッッッッ対謝る気ないだろ!?」
ゲシゲシと八木を軽く蹴りながら悪態をついてみれば、八木はどこ吹く風と言わんばかりに再びうちわを扇ぐ。
食べ終えたアイスの棒をゴミ箱に投げ込み、八木から脚を退けてこちらに来るよう呼びかける。
不思議そうに近寄ってきた八木の胸ぐらを掴んで、今度はこちらからキスしてやった。
だって、やられっぱなしは腹が立つし!何よりこいつに勝ったと思わせるのもシャクだから!
唇に吸い付く程度だったのに、八木が無理やり舌をねじ込んできて本格的なキスへと移行していく。
ちゅく、と小さな音とともに絡みつく舌が熱くて、垂れる汗が頬をすべっていく。
あつくて、しにそ。
ゆっくりと離れた唇に残った甘さは、きっとアイスのせいだと思う。
結局ボクはもっかい八木を蹴ってそのキスの倍返しとした。
「……日比野さんって、無意識に煽りますよね」
「なんの話!?」
「いえ、なんでも……」